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κ係数を活用した抗体検査キットとPCRの比較データ

ICheck株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役 金子賢一)と、相模原協同病院(所在地:神奈川県相模原市 病院長 井關治和)は、Shanghai LiangRun Biomedicine Technology Co.,Ltdが研究開発した新型コロナウィルスの感染を調べる抗体検査キットと、PCRとの比較をκ係数を活用して発表しました。

※カッパ係数の値(k)の値は-1 ≦ k ≦ 1 となり,数値が1に近いほど評定者の分類は一致していることを表します。k=1になった場合は完全な一致となります。 kが0.81~1.00の間にあればほぼ完全な一致(excellent)、0.61~0.80の間にあれば実質的に一致(good)しているとみなされる事が多いです。

ICheck株式会社が推進する抗体検査キットをlateral flow immunoassay(LFIA)測定法で研究しました。

コロナウイルスを疑った症例のPCRとの比較データ

サンプル数70人、感度91.3%、特異度97.8%、PCRとのκ係数が0.90でexcellent (0.8<)と出ました。このうち、キットで陽性を認めた発症8日以降の症例に絞ると以下のようになりました。

■コロナウイルス発症後、8日目以降のデータ

サンプル数69人、感度95.5%、特異度97.8%、PCRとのκ係数が0.93でexcellent (0.8<)と出ました。

■一般社団法人日本感染症学会のデータ(2020年4月17日)を参考に、κ係数で出した場合

抗新型コロナウイルス抗体の検出を原理とする検査キット4種の性能に関する予備的検討

■日本国内4社のデータ

サンプル数10人、感度40%、特異度100%、PCRとのκ係数が0.4
サンプル数10人、感度0%、特異度100%、PCRとのκ係数が0
サンプル数10人、感度60%、特異度100%、PCRとのκ係数が0.6。good (0.6<)
サンプル数10人、感度80%、特異度100%、PCRとのκ係数が0.8。excellent (0.8<)

■イギリス、オックスフォード大学でのELISA測定法で調べたκ係数

サンプル数90名、感度85%、特異度100%、PCRとのκ係数が0.86。excellent (0.8<)。ただし発症10日以降の84症例に絞ると感度100%になりκ係数は1.0となります。

同様に、LFIA法で調べた、9社の抗体検査キットのκ係数は下記になります。
サンプル数、93人、129人、128人、98人、91人、91人、93人、92人、182人として、κ値は平均0.64±0.03、評価はgood (0.6<)となりました。

■中国国内でのLFIA測定法で調べたκ係数

Development and clinical application of a rapid IgM‐IgG combined antibody test for SARS‐CoV‐2 infection diagnosis
サンプル数434名、感度88.5%、特異度90.5%、PCRとのκ係数が0.75。good (0.6<)

相模原協同病院・井關病院長のコメント

相模原協同病院は、感染症指定医療機関として2020年1月の本邦第1例目からこれまで相模原市保健所の協力のもと、市内の新型コロナ肺炎患者を受け入れてきました。
神奈川県相模原市では、中国由来の第1波が2月下旬に到来し、またヨーロッパ経由の第2波が4月上旬に到来しましたが、現在は小康状態です。当市は人口約72万人ですが、現時点ではまだ大規模な疫学調査は施行していません。しかし、当院の救急外来でのPCRの結果と保健所による積極的なクラスター潰しから、有病率は1.6%程度で東京よりは低いと予想しています。

有病率により今後の医療機関や行政の対応が変わっていきますが、有病率を大規模に施行するのに不可欠の抗体検査キットについては、先日の日本感染症学会の発表にあるように信頼性に欠けます。オックスフォード大学グループの発表でも抗体検査キット(LFIA法)の精度に疑問が呈されていました。
今回、抗体検査キットの評価法としてわかりやすい指標がない中で、PCR結果との一致度を評価するためにκ係数を用いて各論文を検証しました。

オックスフォード大学の発表を検証するとELISA法ではκ係数は0.86でした。注目すべきは血中抗体量が安定すると思われる発症10日以降ではκ係数は1でPCRと完全に一致しました。反対に、イギリスでの9社のLFIA法のキットは全てκ係数が0.6程度でした。この報告の限界は発症日がはっきりしていませんので発症早期の症例がどの程度含まれているかは不明であり10日以降の症例に絞り込めばもう少し良好な結果となる可能性はあります。中国のデータも発症日が不明ですが、κ係数は0.75でした。

今回ICheck株式会社から提供を受けたキットはκ係数が0.9であり、特に発症8日以降の症例では0.93となります。まだ70症例程度の評価であることと新型コロナ肺炎の状態が現在小康状態であるため症例に偏りがあると思われますのでさらに検討が必要ですが、少なくとも疫学検査には有用であると評価できます。

今、日本全体で問題になっているのが、患者が病院に行くとコロナウイルスに感染してしまうのではないかという不安です。相模原協同病院は、過去4ヶ月に及ぶ新型コロナ肺炎の治療を通じて得た豊富な経験に基き、PCR、抗原キット、抗体キットなどのツールを適切に使い分けながら相模原市の皆さんが安心して診察を受ける体制を整えています。

今後も新型コロナの第3波以降の発生を警戒しなければなりません。「コロナとともに」社会活動を正常化しなければならないと考えています。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。豊富な治療経験を基に、相模原市民の皆さんとともに新型コロナと闘っていきたいと思います。

【参考資料】
IgG抗体比較

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